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ヴァージニア日記

アメリカで過ごす中で、毎日感じたことを記します。

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玉ねぎ。

玄関で靴を履きながら、お弁当を手渡す私に哲が言った。

実は昨日の夜から、ちょっと体調が悪いんだよね。
え、、大丈夫?え、、どうしよう、どうしよう、、、。どうしたんだろう、、、。

そう言いながら、哲の言葉を聞き終わる前にすぐに涙ぐんでしまった私だが、実は昨日の夜から気づいていた。

食後、ソファに横になっている哲とキッチンから会話していた時、哲の声の出し方が弱かった。哲は疲れると声が出辛くなる。その時に「疲れているでしょ」と喉元まで出かかったが、それを肯定されたところで、哲の気分も私の気分も良くなるわけではないからと思って、聞こえる振りをし会話を続けていたのだ。

でもいざ本人から「具合が悪い」と面と向かって言われると、2年前の時のようになってしまったらどうしよう、、、と不安になってしまう。あの時は自分がしっかりしなくては!と哲の前では一切気弱な態度は取らなかった。本当に弱っている人の前でどうして気弱になれるだろう。でも、いつも頼っている「哲」がベッドに横たわっているのではなく、目の前に立っていたら、弱い私は弱い自分を見せてしまったのだ。

「案の定」的な様子になった私を見て、「だから言いたくなかったんだよ。でも隠すなって言うから。大丈夫だよ。前向きになろうと漢方も新たなものをオーダーしたんだから。」そう言いながら出かける哲を、涙をこらえて見送った。

哲の代わりに私が働きに出てあげたい。

何とか涙はこらえたものの、その午前はずっと心の中がしくしく言い、ハルとクルミには元気な声で話しかけるものの、空元気な私だった。それでもあの子達ががいて本当に良かったと思った。空元気でも、元気な声を出さなかったら、余計元気がなくなっていただろう。自分の大きな声に励まされ、ぴんと背筋を伸ばし歩いた散歩だった。

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朝、玄関で「私に出来ることない?」と哲に聞いた時、哲は考えた後、「さちこはきちんと健康を考えて料理してくれているから、それをしてくれればいいよ」と言った。体に入るものは身を作る。それを管理しているのが私なのだ。大好きな親子丼も美味しく食べることが出来なかった2年前の哲のことを私は良く思い出す。美味しく食べてくれる時は美味しい物をたくさん作ってあげよう。たくさん美味しいと言わせてあげよう。と思いながらあれから毎回キッチンに立っている。いつもだったら「あぁ、忙しい!忙しい!」と慌ただしく狭い家を歩き、冷蔵庫から食材を取り出し野菜を切り、調味料を出し、ボウルを洗ったり、どったんばったん作業する私だが、今日はそのスピードをうんと落とした。哲が元気になりますように。美味しく出来ますように。他のことは考えず、哲のことだけ考えて料理に没頭した。

玉ねぎを切る。アメリカの玉ねぎは品種が違うからなのか、玉ねぎで涙を流したことは数えるくらいしかない。それなのに、なぜか今日の玉ねぎは小さいのにつーんと目に来た。そして瞬く間に私の目は涙ぐむ。心がずっと泣いていたのに空元気な自分の声に支えられ我慢して止めていた涙が、小さな小さな玉ねぎのせいでぽろぽろと流れ出し、そして玉ねぎから来る痛みはもう消えているのに目からは落ちる涙は止まらなかった。きっと神様が、泣きたい時は泣きなさい、、と言ってくれているのかもしれないな、、と思いながら、涙を拭いてまた包丁を握った。

自分が元気にならなくては誰も元気にしてあげられない。そう自分を応援しながら調理した。そして味見をした時、「おいしい」と呟き微笑んだ。あぁ、早く哲に食べさせてあげたい!私の心と目からは涙も消え、そして、料理をしている時は何も出来ない自分から「何かをしてあげられるかもしれない」自分になり気持ちが落ち着くことが分かり、哲の言う通り、これが私の役割なんだ、、、と再確認した。

いつになったら強い人間になれるのだろう。

おべんとうご馳走様!朝より調子が良いから心配しないでね!
夕方、哲からメッセージが届いた。

そして私は、「今日のご飯は丹精込めて作ったよ!大したものじゃないけど、美味しいよ!」と返し、哲からは喜ぶ絵文字が送られて来た。

私達はお互い弱いが、でもこうして支え合い応援しあって弱さ補い生きて行くのだろう。だから一人で強くならなくても良いのかもしれない。

もうすぐ哲が帰って来る。きっと弱さを隠すように元気に「ただいま~!」と帰っ来て、そして私も弱さを隠すように元気に「お帰り!」と言うのだろう。

さぁ、そろそろ食卓の準備をしよう。

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