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ヴァージニア日記

アメリカで過ごす中で、毎日感じたことを記します。

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すーぱーひーろー。

さちこ、あのダウン、洗ったの?
うううん、洗ってからしまおうと思って忘れないように置いてあるだけ。

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着るとキン肉マンのような風貌になる時代遅れな厚みのある、腕が曲がらなくなるようなダウンジャケットは、ゲストルームのベッドの上に洗濯されるのを待って放り投げられていた。私は何でも家で洗濯をする。ダウンはもちろん、スーツもコートも。ママに言ったら「洋服が駄目になちゃうわよ!」とびっくりされたが、アメリカのクリーニング代は高く、いちいち出していられない。

あのダウン、ポケットにおやつが入っているんだよ。
え?なんのおやつ?

私が日本にいる間の雪の日にハルとクルミを連れて公園に行った哲を思い出し、2人のおやつだと思っていた。哲はポケットをさぐりその「おやつ」を取り出して、寝室の棚の上にポンと置いた。

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え?シリアルバー?ハルのおやつじゃないの?なんで?
うん、サバイバルおやつ。
なんの?
幸子を迎えに行った時に、雪で閉じ込められた時のために。
私のため?
うううん、自分のため。雪で空港に辿り着けず車に閉じ込められた時の場合に備えて。

アメリカに向けて日本を発つ前日のことだった。、ワシントンDCエリアの大雪は確実なものとなり、日本を出るその朝には、哲から降り始めたと報告を受けていた。飛行機は飛び立つのだろうか、哲は迎えに来られるのだろうか。

最後に哲と会話した時、「本当に迎えに行けないかもしれないよ。もし空港を出て俺がいなかったらタクシーで帰って来てね。」と言われた。雪だから仕方がないと分かっていても、哲にすぐに会えない、一人で帰らなくてはならないと思うとショックで「えーーーーーー、、、。」と大きな声をあげたが、後から落ち着いて考えたら「雪で事故にでもあったら大変!」と大人になり、「雪が降っていたら迎えに来ないように」と哲に向けてママにメールを打ってもらった。

ワシントンDCから遠く離れた成田では、もちろんDCの雪は想像できず、私は二匹の世話をしながらお留守番をしてくれていた哲を思い最後のお土産を買いこむ。そして飛行機は定刻に無事に飛び立った。機長からはDCの雪のことに触れたアナウンスもあり、最悪の場合は他の空港に着陸し待機になるのかもしれないと腹をくくっていた私は、無事にワシントンDCのダレス空港に着陸した時、チリ人がするように一人でも拍手をしたい気持ちだった。窓の外は吹雪。本当に良く着陸出来た。

ところが着陸してからが問題で、滑走路からゲートまで飛行機が動けず雪かき作業を待たなくてはならなかった。その後も雪のために荷物用カートを動かせないらしく、荷物を受け取るまでには時間がかかりそうだったから、私はコンベアの横にカートを付けてそこへ座り待つことにした。あ、そうだ、iPadのメッセージ機能で哲に電話しよう。

そう思い機内持ち込みの大きなボストンバッグからピンクのカバーのiPadを取りだし開くと、もうすでに哲からメッセージが入っていた。

来てるよ!

その4文字びっくりマークにじわっと眼元がうるむ。

あぁ、、来てくれたんだ。
危ないから来ないでと言っておきながらも来てくれたらどんなに嬉しく、どんなに助かるか。
心の片隅でそう思っていた私だったから、その4文字の言葉を見た時は、誰かにこの喜びを表現したく、横にいる人に「聞いてください!主人が来てくれたんですよ!」と告げたい気持ちになった。そして恋人に会う少女のように急に胸がドキドキし、カートに座る私は数百メートル先にいる哲を思い、もう一人ではないと心が緩やかになっていった。

まだ周っていないコンベアの上に腰掛け直し荷物が出てくるのを待つこと1時間半。その1時間半を、疲れ短気な私が待つことが出来たのもきっと哲がいると分かったからだ。荷物がやっと手に届き、出口を出る。目の前にたくさんの人。皆、誰かを待っている。私はその人混みの中から哲を探す。

あ、いた!キン肉マン!

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もうすっかり冷めてしまったコーヒーを手に持っている哲が待っていた。
あの笑顔。哲のあの笑顔。こんなにほっとさせてくれるものがあるのだろうか。

お帰り。
ただいま。

さぁ、お家に帰ろうとたくさんの荷物を運び、外に出ると空港の駐車場も大変なことになっている。本当に良く来れたねぇ。。
キン肉マンのダウンジャケットのポケットに、サバイバル用のシリアルバーを突っ込んで迎えに来てくれた私のスーパーヒーローはきっと相当迷ったに違いない。これしきの雪は大したことでは無いと空港に簡単にやってくる人もいるのだろうが、ポンコツ車の哲にとっては一大決心、疲れた私を救ってくれたスーパーヒーローのキン肉マンなのだ。


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駐車場で吹雪の中、じっと待っていたポンコツHARU号の窓がなぜか全開だったとしても、きっとそれは焦っていたから。
車内は冷え込みシートに雪が積もっている様子を見て、スーパーヒーローになり切れない哲を心で笑い、座席の雪を払いほっと腰掛けた。

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哲、ありがとう。雪の中、車に閉じ込められた時用にポケットにシリアルバーを入れてくるほどの覚悟で迎えに来てくれたんだね。
帰国後1週間して知ったその事実に私はコーヒーを手にしていた哲のあの笑顔を思い出し、心がオレンジ色の温かいぬくもりで満たされた。
どんなに格好悪くても哲は私のスーパーヒーロー。

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さぁ、もぬけの殻の着ぐるみを洗いましょう。おやつはもう入っていないかポケットの中を確かめて。

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