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ヴァージニア日記

アメリカで過ごす中で、毎日感じたことを記します。

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24年前のお詫び。

12月2日 火曜日の朝。仕事は午後からの哲と一緒に雨の中、車に乗って買い物に行く。アメリカでは「傘」をさす人が少ない。歩くことが少ないからなのか、それとも「多少濡れたって」というおおらかな性格からなのかは分からないが、アメリカに来た当初はその様子を見て驚いた。置き傘までしてまさかの時に備える慎重な日本文化から来たばかりの私には衝撃的な文化だったのだ。それがアメリカに長くいるにしたがい、いつの間にか自分達も傘をささなくなり、防水のジャケットを着ていればそれでよしと思う人たちになっていた。

この日は珍しく日本のような一定した雨脚を持つ雨だった。濡れて風邪引くと嫌だからと私は15年前に哲のために買ったワンタッチの緑の地味な折り畳み傘を手に持っていた。目的地に到着し車から降りながら傘をさす。「哲は大丈夫?」そう聞くと「うん、ジャケット着てるから平気。」と言ってエンジンをとめ哲は車から降り、フードを頭にかぶって歩きだした。そんな哲を待って、私は傘をさし出した。あいあい傘、久しぶりだ。

24年前の雨が降っていたある日、19の私は上野さんに傘を差しだしたことがあったのだ。一ツ橋の校舎からテニスコートに向かう間のほんの少しの距離だったが、傘の下に出来る見えない壁を持つ狭い空間に、一緒にいると思うだけで胸がドキドキした。今の私は傘の軸を境に同じ空間に哲がいてもドキドキなんてしていない。人はよく「空気」のような存在になった、、と深まる関係を表現するが哲は空気ではない。当たり前にいるけれど、それだけでは無い。あの日、あの時、もし付き合おうと言ってくれていなかったら存在していなかったこの関係は、24年の間にいろいろあって、「当たり前」の関係と簡単に表現することは出来ないのだ。空気のように当たり前にあるけれど、空気以上のものなのだ。

24年前の12月3日、詳しく言うとこの日の夜9時過ぎ、三井ビルのイルミネーションの前で私達は「恋人同士」になった。この日はミックスダブルスが開催され、その大会に上野さんが後輩の私に声をかけてくれたのだ。「女子」が「男子」にお弁当を作って持って行くことが恒例となっているこの日、料理の「り」の字も知らない私は「自分が作る」という行為に自信が持てず恥ずかしくて、何も作らずに出向いたのだ。事前に「お弁当は作れません!」と予告した私に「おにぎりだけでも良いんだよ。」と上野さんは言ってくれたが、おにぎりすらも握ることは出来なかった。

24年後の12月3日、朝、キッチンのブラインドを見つめながらおにぎりを握る。おにぎりを握る時は、私は手を見ずに前を向いて握る。ドキドキもせず、ただ哲のことを考えて、手に愛情と力を込めておにぎりを握る。2つのおにぎり、大抵具は違う種類をいれるのだが、哲の性格を考えて「きっと後に食べたい方があるだろう」と哲が好きな「ツナ」には分かるようにビニールテープにマジックインキで「ツナ」と書き、ぺったんと貼った。もう1つは哲の好きな塩昆布。ゴマと合わせて混ぜ握り、こちらはおぼろ昆布を巻いて置こう。それとちょっとしたおかずを入れた簡単なお握りお弁当。あぁ、あの時、どうしてこれくらいのことも出来なかったのだろう。

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「お弁当作り」は、哲との人生でとても大事な軸、2人の架け橋となっている気がする。仕事中忙しいから外に食べに行く時間がもったいないとチリの時代から始まったお弁当作りは、テキサスでは主旨が変わり節約生活のために続けた。学校の友達が美味しそうなハンバーガーやサンドウィッチを買いにに行ったり食べに行ったりしていても、たかだか3ドルのサンドウィッチをももったいないと常にお弁当を持って行った。そしてヴァージニアに戻ってからは若干の贅沢が出来るようになったこともあり、具にもこだわったりし、お弁当作りは方向を変え、私の力み具合に拍車がかかった。エスカレートするその拍車をストップさせるために、一時期お弁当休み期間を設けたが、哲が倒れてからは哲の健康を考えて簡単でも何でも良いから「手作り」を持って行ってもらうことに決めた。

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こうしていろいろ変化を遂げているお弁当作りは、簡単で地味な装いなのに今が最も輝いているような気がする。前の晩から何を作ろうと考えて眠れなくなっていた数年前、今は朝起きてから考え、肩の力を抜いて、ただ哲のことだけ考えて、用意することが出来るようになった。とにかく哲が「ランチ」のことは気にしないで安心して仕事が出来るように、そして楽しみに出来るように、「私に任せておいて」という気持ちで準備することが出来るようになった。そして、お弁当も哲にとって「空気」のような存在になってくれていたら嬉しいなと思いながら握った今日のおにぎり弁当には24年前のお詫びを添えた。

DSC04352 (500x375)

ごめんなさい。

それは言わない約束だよ。と今の哲に言われるのが分かっているから、これは24年前のまだ夫婦にも恋人にもなっていない足立からの言葉です。
お弁当を差し出しながら、、

はい、行ってらっしゃい。
気を付けてね。


と、見送った。

24年前のあの日、青かったあの青年が今はこんな素敵な「大人」になっているなんて想像もしていなかった。そして24年後のこの日、私がこんな風にお握りを握ることが出来るようになっているなんて想像もしていなかった。

ハッピーアニヴァーサリー。

24年前のあの若い二人に、今の二人を見せてあげたいと思った朝だった。

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COMMENT

●ほろっとくるなあ♡

哲さんとさっちゃんが2人3脚で一生懸命に歩んできた人生。厳しい時代もあったのですね。だから、絆がなおさら強まる。2人は本当に素敵です。今日、ふとした合間に、パソコンの手をとめて
お2人のことを考えていました。大切な今をお2人で生きてください。私も八鳥と生きます!

●藤原さんへ。

藤原さん、

こちらのブログまで飛んできてくださり、そしてお忙しいのに(本当に!!)文章を読んでくださりコメントを残してくださってどうもありがとうございます。

今思い返すと若い時の自分達はなんて「青かった」のだろうと思いますが、ゆっくりでも日々まだ成長し、一緒に歩んでいます。
楽しい思い出ももちろんたくさんありますが、振り返ると大変だったこともたくさんあったな、、と思います。
その時は一生懸命だったので全く大変だとは思っていませんでした。
頑張って来たんだなぁ、、と年を取った今の私は若い自分達を誉めてあげたいです。

藤原さんと八鳥さんのご様子はいつもとても温かく、お互いを支え合ってお過ごしの様子に学ばさせて頂いています。
一日一つの「スペシャル」というのも、とても心に残っています。
これからも「八鳥さんと生きて」ください!

コメントをどうもありがとうございました!

さちこ


●NO TITLE

すみません、同じ日にあちこちコメントをしてしまって!
号泣してしまいました。
お弁当、私は母に作ってもらうばっかりですが、
大切な人においしいお弁当を作りたいと思いました。
なんて素敵なお二人なんだろう。。。
いつも、ハルちゃんクルミちゃんのブログと、
アメリカでいただきますのブログは、
更新されたらお知らせが入り、閲覧できるアプリで最新記事を中心に拝見しているのですが、
今日はコメントを書くためにSafariからアクセスしたら、ブログのメニューバーに色々あることに気が付き、
せっかくだし読ませてもらおうっと…と、
ポチりとしたら、もう大号泣の内容だったのでした。
本当にいい御夫婦だなあ。。
私もいまいる大事な人とこんな夫婦になりたいです!!
その前に、お料理の勉強もしないとねっ。ハルママさんは超センスあるし!
はぁー。泣いた。いい小説読んだ後みたいです。

●ankoさんへ。

ankoさん、

こちらにまで遊びにいらしてくださってありがとうございます!
ハル日記と食日記は更新通知設定にしてくださっていたなんて!
嬉しいです♪

そしてこのブログを読んでくださりコメントを残してくださって本当にありがとうございます。
ヴァージニア日記系の日記はテキサスにいた時から始め、一番古い日記なので更新回数は少ないのですが、私が大切にしているブログなんです。
なのでとても嬉しかったです。

お弁当、私も母に作ってもらうお弁当が美味しくて大好きです。
でも、今はそんな美味しさを哲にあげることが出来たらな、、、、と思いながら今日もお握りを握り、ちょっとしたおかずを作りました。
ankoさんにもいる大事な人に是非是非お弁当を作ってあげてくださいね。
私はお弁当は日々のお料理よりもさらに愛情が詰まっているものだと思うのです。
小さな四角の中にぎっちりといろいろ入れる工夫や苦労、そしてそれを作る楽しみ。

温かいコメントをどうもありがとうございました!

ハルママこと SACHIKOより

●NO TITLE

こんにちは!
ステキなご夫婦です(*^▽^*)
哲さんもさちこさんも お互いを思いやり
感謝の言葉を素直に口にできるからこそですね。
このところ あぁ言えばこう言う我が夫婦…(^^;)
お二人がまぶしいですぅ(^^ゞ

●ことははさんへ。

ことははさん、

こちらにも訪問してくださり、お忙しいのにコメントを残してくださってどうもありがとうございます。
いえいえ、私達(私?)も、あぁ言えばこう言う夫婦ですよぉ。
でも、感謝の気持ちは忘れないように日々努力しています~。
なかなか難しいですね。
ことははさんご夫婦はとても素敵だと思います♪

SACHIKO

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